環境問題にどう対応するべきか?中小町工場

今年、日本のものづくりはWEEE&RoHSと言う活字に翻弄される。
WEEEは今年の12月31日までに目標を達成することを義務付けられ、RoHSは今年7月1日以降市場に投入される製品に適用されるからだ。
大手企業と直取引をしている中小企業は「グリーン調達」という活動を通じ、昨年一昨年とこの活字に大いに悩まされたものである。何を言っているのか解らない方に簡単にご説明すると、これらの規制はEUにおける環境規制の動きである。域内に有害物質を持ち込ませない規制というイメージから「日本つぶし」と言われたり、軍による世界制覇のアメリカに対抗して規制により世界制覇するEUの野望とも言われた。
目標と安易に考えていた日本企業も、法整備されたオランダの入管でAV機器メーカーのSO社が摘発されて以降、本年7月1日に向け下請け企業の締め付けを厳しくし、グリーン調達を達成できない下請けとは取引をしないとして仕事の引き上げを行っている。大田区が主宰する共同受発注相談会においては、「グリーン調達達成企業・ISO14000取得企業のみ」と指定してくる発注元が多くなってきたのも
その所以である。
下請け業にとってのテーマは、RoHSで使用を禁止されている有害6物質、鉛・水銀・カドミウム・6価クロム・ポリ臭素化ビフェニール(PBB)ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)を含んだ部品・副資材等をEU向け製品に使用しないということである。表面処理のクロメート・真鍮に含まれるカドミウム・プラスチックの難燃剤などが身近なものとして上げられる。
関東における大手企業の対応はSO社(AV機器)タイプとCA社(事務機)タイプに分かれると言われており、前者はEU輸出向け製品の構成部品の「成分分析」を行うし、構成部品点数の多い後者は成分分析を断念して「下請けを含むグループ内の製造現場から環境不適合物質を全廃し、結果として輸出製品に有害物質は含まれない」としている。
工場のみならず同一敷地内の事務所で使う消しゴムやカーボン紙などの出所も確認を義務付ける企業もある。
今年翻弄されると冒頭書いたのは、この欧州の動きに中国も中国版WEEE・RoSHを施行となったからだ。(1月に公布、7月施行の予定であったが来年1月施行になる見込みである。)
経済産業省の担当者の言葉を借りれば、EUにしても中国にしても含有化学物質の目標値の算出方法など明確になっていない、日米の企業が自主規制値を出しているが、これで本当にEU・中国の規制をクリアーできるか断言出来ない。後出しジャンケンになるかも
しれないということである。
中国の環境規制は、国内の汚染防止と大市場EUへの輸出をにらんだ国内整備である一方、日本からの輸入部品に対するハードルと考えられている。また、中国からの輸出製品の生産工程には適用しないともいっている。従ってEU以外の国、日本などには適用外の製品・部品が流れ込んでくることとなる。
中国部品を日本に輸入し組立てEUに輸出を行う企業では、全品種抜き取り検査が自己防衛だと言っている。
環境問題への対応は企業の死活問題でもありビジネスチャンスでもあります。
貴方の企業は如何しますか?大丈夫ですか?グリーン調達から締め出されませんか?
測定器を買って抜き取り検査で出荷しますか?
この一年、冒頭の活字から目を話せない。

WEEE:Waste Electrical and Electronic Equipment (廃電気電子機器)
RoHS:The Restriction of the use certain Hazardous Substances in electrical and
electronic equipment      特定有害物質使用制限指令

 
本文は、「2006年3月  大田工業連合会 工和会機関紙への投稿分」より