新素材模擬座談会
司会者:本日は工業新聞各紙の記者の皆様に金属材料の近況についてお話し戴きます。
     本日は用途を携帯端末・光学機器と言った所のお話に絞ってお話ください。

A記者:携帯端末というと、パームトップパソコンなどにマグネシウムが多く使われる  

    ようになってきた。携帯電話には以前からも使われていたからね。

    T芝社のRブレット、最近ではSニー社のBイオノート、マグネシウムの軽さ

    と、EMI効果(対策)の高さが良く生かされている。

    デジタル・ビデオなどの光学品へもマグネシウムが多く使われ出したのは軽さと、
    ネジレに対する強さからだ。

B記者:軽さといえば、今までプラスチック・モールドの独壇場だった。

    確かに、マグネシウムの比重は1.8モールドの1.2と遜色が無く、

    アルミの2.7亜鉛の6.7を大きく引き離している。

    しかし、コストの面では今でもモールドが一番安いと思うよ。

C記者:表面的なコストの面では確かにプラスチック・モールドは安い。

    しかし今、環境問題を問われる時代にプラスチックは安いと言いきれるのかな?

    今後の産業廃棄物処理・製造者責任・リサイクルといったキーワードを

    考えると、プラスチックで設計すると会社の将来を危うくすると言えるかも!
                           (ワッハッハ、皆の笑い)
    環境ホルモンの恐怖でも、プラスチック・モールドの原材料が問題視されている。

    それに、EMIに関してはプラスチックはダメだ。

B記者:確かに、プラスチック・モールドの将来は暗い。

    だから、モールドのマシン・成形機メーカを中心にチクソ・モールディングという

    製造法が売り出され、このノウハウを買うプラスチック・モールドメーカが
    出始めている。

    Rブレットはチクソ・モールドの名を世に知らしめた製品だ。

C記者:チクソね。確かに素晴らしい理論だ。今後注目していく必要はあると思うね。

    ただ現時点では、チクソの低融点鋳造法が上手く行かないようだ。

    チクソで設計した製品が、マグネシウムダイカストに戻ってきているよ。

    チクソの理論どおり湯が回らず、仕方なしに温度を上げると今度はバリが張ってしまう。

    こうなると金属を扱うノウハウの無いプラスチック・モールドメーカでは手に負えない。

    また、ライセンス・主・周辺設備投資も新規になるので償却の全てがコストに

    掛かってくる。
    成形サイクルが1分や2分というものネックだ、量産数量が追いつかずに離れて行く
    ユーザーも多いと聞くし、コストアップにもつながる。

    その点、従来からのマグネシウム・ダイカストメーカーは一日の長がある。

    当面は、従来からのダイカストメーカ。将来改良が進めばチクソ・モールディングかな。

A記者:両者の間を行く新しいグループがある。たしか、エーケー?エイショーて言ったかな。

    精密マグネシウムダイカストと言うのだそうだ。

    精密亜鉛ダイカストの20μ以下の公差を追求してきた金型技術・鋳造ノウハウと、

    ミクロンを追求できる社内の品質保証設備・品質モラルで、マグネシウムの世界に
     乗り出したそうだ。

    100μ、200μの世界に生きてきたアルミ・ダイカストメーカや、低温・軟質材料の

    世界に生きてきたプラスチック・モールドメーカの金型ノウハウでは成し得ない、
    精密ダイカストの世界をマグネシウムでも展開しているらしい。

司会者:金属の世界では、環境問題・EMI対策・軽量化を追い風にマグネシウムの高精度化による

    コストパフォーマンスの追求競争がホットである。

    精密マグネシウムから目を離せないということで、本日の座談会を締めさせていただきます。